空〜環境

待ったなし

●待ったなし（2017年09月）
なお、リンク等は発表時のものです。

　大雨による冠水で開催が危ぶまれていた「全国花火競技大会」（大曲の花火）
が２６日、秋田県大仙市の鐘紡川河川敷で開かれ、夜空を彩る約１万８０００
発に約７４万人（主催者発表）が歓声を上げた。

　当日は午後から好天に恵まれたものの、前日の大雨で河川時期は濁流に覆わ
れ、会場では前夜遅くまで懸命の復旧作業が続けられた。
　気象庁の統計によると、１時間に８０ｍｍ以上の「猛烈な雨」が降った回数
が、２０１６年までの１０年間では１９８０年代と比べて５割近く増えている
という。「猛烈な雨」は、傘が全く役に立たなくなるほどの豪雨で、水しぶき
であたりが白っぼくなり、息苦しくなるような圧迫感もある。
　気象庁によると、「猛烈な雨」が降った回数は、地域気象観測システム（ア
メダス）１０００地点あたりで、２００７〜２０１６年の１０年間では年平均
１７．９回にのぼり、１９８０年代の１２．３回から４６％増えている。年に
よってのばらつきはあるが、１９９０年代には１３．５回、２０００年代には
１５．６回と徐々に増加傾向にある。
　大雨の増加は温暖化の影響が考えられている。気象庁によると、気温が上が
ると、大気中に含有される水蒸気量が増える。このため、ひとたび雨になると
大量の水分が地表に落ちて大雨になりやすい。気象庁では、日本の平均気温は
１００年で１．１９度のペースで上昇していると試算しており、これに伴い、
大雨や局地的な豪雨の発生回数も全国各地で増えると予測している。
　また、海水温も上昇し、海水の蒸発量が増えて、雨雲ができやすくなってい
ることから、台風も強い台風となりやすく、被害が甚大化する傾向にあること
が、ＮＨＫ特集のスーパー台風の回で放映されもした。
　敬老の日前後に日本列島を縦断した台風１８号もそのひとつだろう。
　「猛烈な雨」は、３年前の２０１４年８月には広島土砂災害を引き起こして
いる。このときは、広島市安佐北区で１時間雨量が１０１ｍｍに達した。積乱
雲が局地的に連続発生して豪雨が続く「線状降水帯」が原因で、２０１５年の
関東・東北豪雨や、２０１７年７月の九州北部豪雨でも発生していた。
　連続して降り続かなくても、短時間であっても大雨となることも多くなった。
　数年に１度程度しか発生しないような短時間の大雨が降った場合に、気象庁
は「記録的短時間大雨情報（記録雨）」を発表しているが、記録雨の２０１７
年の全国での発表回数は８月３０日までに８３回だった。
　東京では、大雨も含めて雨が降り続いた８月で、東京都内では、計２７日間
も雨が降った。これは観測記録のある１８８６年（明治１９年）以降の最多記
録に並ぶ日数になる。連続して雨が降った日数でも１〜２１日の２１日間で、
８月としては１９７７年の２２日間に次ぐ長さとなった。
　この影響で、日照時間は平年の半分しかない８３．７時間だった。１８９０
年の観測開始以来、史上最短だった。日照時間の平年値は約１６９時間となっ
ているが、その約半分しかない結果となった。これまで東京都で最も日照時間
が短かったのは、１９７７年の８５．８時間で、次いで１９８０年（９０．３
時間）、１９９８年（９１．７時間）の順となっている。
　気象庁によると、この長雨や日照不足は、オホーツク海高気圧と太平洋高気
圧の力関係が、例年と違っていたことが原因だという。
　北海道の北にあるオホーツク海高気圧の勢力が強く、太平洋高気圧の張り出
しが弱かったのだ。このため、北東からの冷たく湿った空気が北日本や東日本
の太平洋側に流れ込み、天候が崩れたという。
　大雨の増加だけでなく、気候の不順さは地球温暖化の影響が考えられている。
地球温暖化により、大気だけでなく、海水温が上昇しているためだ。
　海水温の上昇の影響を受けているのが、サンゴ礁だ。
　環境省は、沖縄県にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」の岩場で、サンゴ
に覆われた部分の割合（被度）が２０１７年６月下旬と２０１６年夏の比較で、
半分以下に減少したと発表した。
２０１６年７〜８月の調査で平均２９．５％だった被度は、２０１７年６月下
旬には１２．５％まで減少し、場所によっては昨年の約１０分の１になった場
所もあったという。水温が上がりやすい浅瀬での減少が著しい傾向があった。
　海永温が上昇すると、サンゴと共生する植物プランクトンが失われる「白化
現象」が起き、サンゴは十分な栄養が得られなくなって死滅する。石西礁湖で
は昨年末、海水温の上昇などで約７割のサンゴが死滅しており、その後も回復
が進んでいない実態が明らかになった。
　サンゴなどの生物が警鐘を鳴らし続けてきた地球温暖化の影響が、もはや人
間社会に直接影響を与えようといている。猶予は少ない。